歯の痛みというものは、ほとんどの人が一度は経験したことがあるでしょう。歯が痛むということは、歯や口の中に何らかの問題が起きているというサインです。その原因はいくつかの可能性があり、症状もそれぞれ変わってきます。今回は歯が痛むことについてメカニズムや代表的な歯が痛む症状について解説します。
■歯が痛むメカニズム
歯が痛むメカニズムは、大きく分けて2つあります。1つは、歯の神経が刺激されることで痛みを感じる場合です。もう1つは、歯の周囲の組織が炎症を起こすことで痛みを感じる場合です。
◎歯の神経が刺激される場合
歯の神経が刺激される場合は、主にむし歯や知覚過敏が原因です。歯は、表面のエナメル質、中間の象牙質、中心の歯髄という3層の構造になっています。歯髄には、血管や神経が集まっています。歯の神経は、温度や圧力などの刺激を感じる役割を果たしています。
歯の神経が刺激されることによる症状は具体的に以下のようなものがあります。
・むし歯
むし歯口の中に常在する細菌が糖分を分解して酸を作り、歯の表面を溶かすことで起こります。むし歯が進行すると、歯の表面のエナメル質が溶け始めて象牙質が露出します。象牙質には、歯髄につながる小さな管があります。この管を通って、冷たいものや甘いものなどによる刺激が歯髄に伝わり、歯の神経が刺激されて痛みを感じます。さらにむし歯が進行すると歯髄まで細菌が侵入して、歯髄炎を引き起こします。歯髄炎は、歯の神経が炎症を起こすことで、眠れないような激しい痛みや腫れを引き起こします。
・知覚過敏
歯の神経が過敏になることで、冷えたものや温かいもの、そして酸っぱいものなどの刺激に対して、しみるような痛みを感じる状態です。知覚過敏は、歯の根の部分にあるセメント質や象牙質が露出すること痛みを感じます。セメント質や象牙質が露出する主な原因は、歯ぎしりや硬いものを噛むことで歯がすり減ったり、歯周病や歯の磨きすぎなどで歯茎が下がったりすることです。セメント質や象牙質にも、歯髄につながる小さな管があります。この管を通って、刺激が歯髄に伝わり、歯の神経が刺激されて痛みを感じます。
◎ 歯の周囲の組織が炎症を起こす場合
歯の周囲の組織が炎症を起こすとその炎症による痛みが発生します。主に歯周病や根尖性歯周炎が原因です。
・歯周病
歯と歯茎の間にある歯周ポケットに細菌が繁殖して、歯茎や歯を支える歯槽骨などの組織が炎症を起こすことで起こります。歯周病が進行すると、歯周ポケットが深くなり、歯茎が腫れたり出血したりします。また、進行すると歯槽骨が溶けて歯がぐらついたり、最悪の場合は歯が抜け落ちたりします。
・根尖性歯周炎
歯の根の先にある根尖部に炎症が起こることで起こります。根尖性歯周炎の原因は、むし歯や歯の外傷などで歯髄が壊死し、歯の根の先から細菌が侵入して感染することです。そして歯の根の周囲に膿が溜まって、歯の根を支える歯根膜や歯槽骨に炎症を引き起こします。この炎症は、歯を噛んだり触ったりすると強い痛みが生じ、顎や頬に腫れや熱感が生じたり、発熱などの全身症状が出たりすることもあります。
【歯が痛む前に歯科医院を受診しましょう】
歯が痛むといってもさまざまな原因が考えられます。どんな原因であっても痛みを放置するとどんどん悪化する可能性がとても高いので、痛みに気付いたらすぐに歯科医院を受診しましょう。そして歯が痛むことがないよう日頃から歯磨きやフロスなどを行い、定期的に歯科医院で定期検診を受けましょう。