歯科医院で受けるお口のケアには様々な方法がありますが、その中でも「スケーリング」と「クリーニング」という言葉はよく耳にするかと思います。この記事では、歯周病治療の一環として行われる「スケーリング・ルートプレーニング(SRP)」に焦点を当て、その目的や具体的な処置、効果についてお話します。
■スケーリング(SRP)とは
スケーリング・ルートプレーニング(SRP)は、歯周病治療の基本的な手法の一つで、歯と歯茎の間に溜まった歯石や歯垢(プラーク)を除去するための専門的な治療です。SRPは、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯茎の隙間に病原性細菌が増殖してしまうことで起こる炎症(歯周炎)を抑えるために行われます。
歯石やプラークはブラッシングだけでは完全に除去することが難しく、特に歯周ポケット内部に溜まったものはセルフケアで取り除くことができません。SRPは歯周病の予防や改善を目的として行われ、歯周組織を健康な状態に導きます。
■SRPの目的
SRPの主な目的は、歯周ポケット内の病原性細菌を物理的に除去して炎症を抑え、歯周組織を健康な状態へと導くことです。
これにより、歯肉の腫れや出血、口臭、歯の揺れなどの歯周病の症状を改善し、最終的に歯を失うリスクを防ぎます。特に歯周ポケットの深さが3ミリ以上になると、進行性の歯周病によって歯を支える骨にもダメージが広がる可能性が高まるため、SRPはその進行を抑えるために重要な処置です。
■SRPの流れ
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1.歯周ポケットの測定
歯科医師または歯科衛生士が専用のプローブを使用して、歯周ポケットの深さを測定します。どの部分に歯石が溜まっているかや炎症の進行具合を確認します。
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2.スケーリング
超音波スケーラーを使って歯周ポケット内や歯の表面の歯石を除去します。これにより、歯肉の炎症を引き起こしている細菌や歯石を物理的に削り取ります。
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3.ルートプレーニング
スケーリングの後、歯根表面を滑らかに整えるルートプレーニングを行います。歯根表面がざらざらしていると再び細菌が付着しやすくなるため、滑らかにすることで再付着を防ぎます。そうすることで歯肉が再び歯に付着しやすくなります。
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4.アフターケアと定期メンテナンス
SRPの処置後は、適切なブラッシングやフロッシング、歯科医院での定期的なチェックアップが必要です。SRPで一時的に炎症が落ち着いても、再発防止には継続したメンテナンスが欠かせません。
■PMTC(クリーニング)との違い
SRPと似たものとして「PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)」というクリーニングもあります。どちらも歯科医院で行われるプロフェッショナルケアですが、目的や処置内容には明確な違いがあります。
PMTCについての詳しい内容をご紹介しています。こちらも併せてご確認ください。
◎目的の違い
SRPは歯周病の治療として、歯周ポケット内部の病原性細菌や歯石を徹底的に除去し、炎症を抑えることが目的です。PMTCは主に虫歯や歯周病の予防を目的とし、歯の表面や歯間のプラーク・バイオフィルムを除去してお口を清潔に保つためのケアです。
◎処置部位の深さ
SRPは歯周ポケットの深部に溜まった歯石やプラークを取り除くため、歯周ポケットの中までアプローチします。一方、PMTCは歯と歯の間や歯の表面に対するクリーニングであり、歯周ポケットの深部までは処置しません。したがって、歯周病が重度に進行している場合にはPMTCでは不十分です。
◎施術頻度や処置が必要な方
SRPは症状に応じて1回から数回に分けて行われ、歯周病の患者さま向けの治療です。PMTCは予防ケアとして定期的に行われることが多く、歯周病の進行が見られない健康な方でも受けることができます。
【歯科医師に相談しながら治療をすすめましょう】
スケーリング(SRP)は歯周病の進行を抑えるために、歯周ポケット内の歯石や細菌を除去する治療です。PMTCが予防ケアを目的とするのに対し、SRPは歯周病の改善を目指した処置であり、口腔の状態に応じて適切なケアを選ぶことが重要です。